書籍データ

• 古寺巡礼
• 和辻哲郎
• パブリックドメイン
• 評価 ★★★★★

おすすめポイント

2009年に行われた阿修羅展では、若き女性が殺到し仏像ブームと騒がれたことがありました。実際はブームなどではなく、歴史の繰り返しの中でのリバイバル、ルネッサンスと言えます。奈良時代以来、老若男女を虜にしてきた仏像の持つ美しさに、現代人が魅了されるのはなんら不思議ではありません。

「古寺巡礼」は、奈良を中心とした仏教芸術を、若き和辻哲郎の精緻な描写と、美しい文体で記しています。

100年近く前の本なので、最新の仏教芸術の研究に照らし合わせると、異なる見解があるかもしれませんが、それでもこの古寺巡礼の価値を下げるものではないと思います。

古寺巡礼は、仏教芸術の解説書として読むより、仏教芸術に対する熱、陶酔感を味わう一冊だと感じます。

仏教芸術の知識がないと、難しいと感じるかもしれませんが、実際に奈良、京都を訪れて仏像の美しさを体験すれば観じることがあるはず。

巡ってから読むも良し、読んでから巡るも良し。

スマートフォンに入れて、巡りながら読むも良し。

仏教芸術だけでなく、芸術に興味のある方にはおすすめです。

本の紹介

哲学者和辻哲郎が若き頃、奈良を中心に古寺を巡り、仏教芸術について綴った随筆。仏教芸術についての深い考察が、ただの旅行記とは一線を画している。

Kindle版は、パブリックドメインで、青空文庫版をKindle化している。

この本を読んで思ったこと

私事ではありますが、４０を目前に仕事を辞めて、半年ほど京都に住んでいたことがあります。

その時は、寺社仏閣をひたすら巡っていたのですが、当時はこの古寺巡礼のことは知りませんでした。

もっと以前に読んでいたら良かったな、と思った反面、出会っていたら影響受け過ぎていたはずなので、ほぼ白紙の状態で巡ったことは自分にとって良かったのかもしれません。

若き和辻哲郎氏も古寺を巡りながら、自分の将来にも混沌としたものを抱えていたことが伝わってきます。

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