書籍データ

• ブラック・ジャック創作秘話　~手塚治虫の仕事場から~
• 吉本浩二 (著, イラスト), 宮崎克 (著)
• 出版社: 秋田書店
• 評価 ★★★★★

おすすめポイント

手塚治虫ファンにはたまらないブラック・ジャック創作の裏側を知ることが出来ます。また、手塚治虫先生の下に集ったアシスタントは、寺沢武一さん、小谷憲一さん、高見まこさんなど、1980年代から1990年代にかけて活躍した漫画家なので、当時の漫画を知る人には懐かしい顔ぶれで、嬉しくなることは間違いありません。

何より手塚治虫先生が、ボロボロになりながらも全身全霊で取り組む姿には、手塚治虫ファン、漫画ファンならずともきっと何かを観じることでしょう。

こまねずみシリーズや、昭和の中坊などを描いた吉本浩二さんの漫画は、少しクセの強い画風なので、好き嫌いはあると思いますが、その分、手塚治虫先生の必死さが伝わってきます。食わず嫌いをせずに一度読んでみてはいかがでしょうか。

本の紹介

鉄腕アトム、ジャングル大帝、火の鳥など、数々の名作を世の中に生み出し、伝説となった手塚治虫。しかし、ブラック・ジャックの誕生直前は、虫プロの経営悪化や、時代の変化による人気低迷など、不遇の時代であった。しかし、漫画への情熱は決して失っていなかった。心血を注いだブラック・ジャック誕生秘話を、当時を知る関係者に取材し、天才手塚治虫に迫った一冊。

この本を読んで思ったこと

漫画の神様と言われた手塚治虫さん。メディアに登場した生前の手塚治虫さんは、ベレー帽を被り人懐っこい笑顔の人格者のイメージでした。ただ一方では、アニメーション制作会社の虫プロでは、無理な状態でアニメーション制作を進め、アニメーションの制作現場をブラックな現場にした張本人だという人もいます。

この本の中でも、スケジュールがギリギリでも仕事を受け続け、現場や編集を混乱させ、口の悪い人間には”遅虫”、”嘘虫”などと陰口を叩かれていたと書かれています。

安請合いをし、何度もトラブルになり、いつもギリギリ。それでも、アシスタントや編集の人達の多くが、未だに手塚治虫先生崇敬するのは、出来上がった漫画の面白さよりも、常に全力で漫画に取り組む姿勢にあったようなのです。

好奇心旺盛で、常に新しいことを研究し、新人の気持ちを忘れず、時には、他人の才能に嫉妬さえする。手塚治虫先生の漫画への真剣さには、胸が熱くなってしまいます。

数々の衝撃的なエピソードの中でも、アメリカ編は度肝を抜いています。

連載を何本も抱えながらも、アメリカへ飛んだ手塚治虫先生。

インターネットはおろか、FAXもない時代。

原稿を送ると言いながら、締切に間に合わなかった先生は、電話と方眼紙を使ってファックス代わりに、日本にいるアシスタント達に指示を出すのです。

結局そのアイデアは失敗したのですが、手塚治虫先生はなんと、

というように、過去に描いた漫画のページ数とコマを指示してアシスタントに描かせたのです。

さらに驚きなのが、手塚治虫先生は全く資料などを見ておらず、完全に原稿を暗記していたと言うのです。さらにさらに、日本においてある資料の、何ページに資料写真があるかも覚えているという、あまりにも天才過ぎるエピソードなのでした。

才能に恵まれただけでなく、命をかけて漫画を描いていた手塚治虫先生。

何かを産み出すということは、まさに身を削る必要があるのかもしれませんね。

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