エロエロ草紙を電子書籍化せよ!
ここに「エロエロ草紙」という一冊の電子書籍(KindleとiBooksで発売)がある。
すでにご存知の方も多いだろう。
1930年に発禁処分を受けた作品。およそ80年の時を経て国立国会図書館デジタル化資料でデータ公開されてからというもの注目を集め一躍話題作となった。
このような華やかなニュースとは別にひっそりとそのプロジェクトは進められていた。
「エロエロ草紙」は前述のとおり国立国会図書館デジタル化資料で公開されていることもあり、その内容については、あえて触れない。ここでは電子書籍版「エロエロ草紙」に収録されているオリジナルコンテンツに焦点をあて紹介していくことにする。
電子書籍版「エロエロ草紙」には、そのプロジェクトの概要、旧字リストや用語解説といった豊富なオリジナルコンテンツが収録されている。このオリジナルコンテンツの特徴は幾つかあるが、わたしの心に残ったのは電子書籍化プロジェクトの裏話的なことだった。
彼らが国会図書館から「エロエロ草紙」転載について承諾を得たのは2013年1月15日。
文化庁eBooksプロジェクトとして期間限定の電子書籍の無料配信実験が文化庁から発表(1月29日)される2週間前の出来事だ。
わかりやすくいうと文化庁の発表は、同年2月1日から「エロエロ草紙」を含め13冊の電子書籍の無料配信を期間限定でやりますよ!!ということだ。
文化庁eBooksプロジェクトとして電子書籍化されるのであるから、わざわざ彼らが電子書籍化する意味はこの発表により潰えたといってもよいであろう。 そのような状況の中、どのような考えのもとに電子書籍化の続行を決断し、プロジェクトを進めていったのかが書かれていて興味深い。
このオリジナルコンテンツを読むと彼らの「エロエロ草紙」に対する想いの強さをうかがい知ることができる。そしてその想いは、電子書籍化の作業一つ一つにもあらわれていた。
彼らの電子書籍版「エロエロ草紙」は、テキストがデータ化されている。この点が国立国会図書館デジタル化資料で公開されているデータや文化庁eBooksプロジェクトで配信された電子書籍との最大の違いの一つとなる。テキストがデータ化されたことにより、読みやすさでいくと当たり前だがこの二つとは比較にならないほど快適だ。
国立国会図書館デジタル化資料の公開データをみればわかるが、文字がつぶれて読めないところが多数存在する。しかしながらデータ化されたテキストにおいてそのようなことはおこらない。
テキストのデータ化は通常OCRという文字認識技術を使う、簡単に言うと機械に読ませてデータ化するやり方である。現在OCRの認識率は99%以上ともいわれている。そして正しく認識されなかった残りの1%以下の文字を人が修正していく。
しかしながら電子書籍版「エロエロ草紙」では文字認識技術を使ったテキスト化はできなかったであろう。
原書が発禁処分を受けたことでほとんど流通していないと思われ、原書自体が入手困難であるためだ。原書を購入してOCRにかけることは難しい。実際に彼らも原書が手元に無いために国会図書館から転載の承諾をうけたのだろう。
画像データからもOCRはかけることができる。しかし国立国会図書館デジタル化資料の画像データでは、その画質及び旧字などによりOCRの認識はほぼ期待できないであろう。
そうなると全文手打ち、文字がつぶれていて読めない箇所も多く、旧字体や異体字のような今では使われていない漢字のオンパレードだ。 テキストのデータ化は相当難航したであろうことは容易に想像がつく。
電子書籍版「エロエロ草紙」では旧字などの文字についても極力原書に沿うようにつくられている。
ここでまた問題が発生する。異体字のような現在使われていない漢字は電子書籍を読むためのリーダに準備されていないものが多い。しかもそのような漢字は「エロエロ草紙」には相当数ある。これらの漢字を電子書籍で表現するためには、特別なフォントを用意するか、漢字の画像を用意するしか方法は無い。
彼らは、後者の画像を用意する方法をとっている。
国立国会図書館デジタル化資料のデータでは不鮮明で読み解くことのできない漢字について、彼らは再三国会図書館へ足を運び原書で確認している。
この確認作業を経て、次は漢字の画像を用意しなければならない。そしてその画像を電子書籍に埋め込んでいく、数えてはいないが画像化された漢字は100を超えるだろう。そして文中に画像がつかわれている箇所に至っては1000を超えただろう。
この途方もない作業を終えてはじめて彼らのいう電子書籍化はなるのだ。
そして彼らはそれをやり切って電子書籍版「エロエロ草紙」をつくりあげた。
もし、この電子書籍を購入する機会があるならば、そして時間が許すなら是非彼らの用意したオリジナルコンテンツもあわせて読んでみてほしい。
最後に余談だが、今回、電子書籍(マーケットでの販売が出版社以外にも開放されているものに限定)について思うことがあった。
それは、過去に作られ、その時代に商品的価値を 認められず、市場から姿を消けしてしまった作品達にあらたな命を与えることを可能にしてくれたことだ。これは沢山の人が読者として、ときに販売者として参加できる電子書籍がかなえてくれた一つのユメだと思う。
これからの古き作品との出逢いが楽しみでしょうがない。
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